導入のポイント導入のポイント

早期の対応が必要です

平成25年4月1日より改正労働契約法が施行され、多くの企業で平成30年4月から本格的に有期社員に無期転換への申込権が発生しています。無期転換ルールへの対応にあたっては、中長期的な人事労務管理の観点から、

無期転換ルール無期転換ルール

これらの準備には一定の時間を要するため、準備と対応は早期に行いましょう。

無期転換制度を導入するには?

無期転換制度の導入にあたっては、
以下のステップを参考に進めていきましょう。

有期社員の就労実態を調べる有期社員の就労実態を調べる

各項目の具体的な内容について説明します。

【STEP1】有期社員の就労実態を調べましょう【STEP1】有期社員の就労実態を調べましょう

まずは、自社で働いている有期社員の現状を把握しましょう。
有期社員の人数、職務内容、月や週の労働時間、契約期間、更新回数、勤続年数(通算契約期間)、今後の働き方やキャリアに対する考え、無期転換申込権の発生時期などを把握しましょう。
そのほか、会社の就業規則において、有期社員の定義が明確になっているか、正社員、有期社員の労働条件等が就業規則、給与規定等においてどのように規定されているかも確認しましょう。

【STEP2】社内の仕事を整理し、社員区分毎に任せる仕事を考えましょう【STEP2】社内の仕事を整理し、社員区分毎に任せる仕事を考えましょう

次に、有期社員の計画的な活用方法を考えましょう。
これまでは、一般的に「正社員」とは、無期契約労働者を指すことが多く見られました。有期社員が無期転換した場合、転換後の雇用区分に応じ、従来の「正社員」と役割や責任を明確にしておかないと、トラブルが発生するおそれがあります。
中長期的な視点を持ち、効果的な人事管理を行うために、以下について整理しましょう。

(1)仕事の内容を分類しましょう

下の図は、業務の特性の違いに着目して、仕事のタイプ分けをしたものです。
現在、有期社員が従事している仕事について、基幹的な業務/補助的な業務(縦方向)と、業務の必要性が一時的/恒常的(横方向)の2つの観点で分類すると、大きく3つのタイプに分けることができます。 業務の必要性が一時的な仕事(左側)の場合は、単発・短期であることから、任せる業務内容に応じて、適した有期社員を活用することになります。
業務の必要性が恒常的な仕事(右側)は、いわゆる「正社員」や雇用の定めのない無期転換後の社員などの無期労働契約の社員が担うことが考えられます。

仕事の内容

仕事の内容

(2)有期社員の転換後の役割を考えましょう

人材の有効活用という観点から、現在、自社で雇用する個々の有期社員の活用方法を検討しましょう。 会社の有期社員一人ひとりをそれぞれどのように位置づけ、活用していくかがポイントになります。
無期契約への転換方法には、主に次の3タイプがあります。

①雇用期間の変更
契約期間のみを有期契約から無期契約へ変更する方法です。賃金や労働時間など、その他の労働条件は変更されません。無期転換前と比べ、職務や処遇を変更する必要がない社員が対象です。

②多様な正社員への転換
いわゆる「正社員」と比較して、勤務地や労働時間、職務などの労働条件に制約を設けた正社員(「多様な正社員」)への転換です。
多様な正社員では、転勤がない、残業時間に制限を設けるなどにより、働き方に制約がある社員が働き続けやすいなどのメリットがあります。

③正社員への転換
業務内容に制約がなく、入社後定年に達するまで勤務することを想定した、一般に「正社員」「総合職」等と呼ばれるいわゆる「正社員」への転換です。
キャリアアップを図り、中核的な労働力として会社に貢献したいと考える社員が活躍できます。

すでに雇用している有期社員やこれから採用する有期社員を無期転換していく際に、上記の3タイプのいずれがふさわしいのかを、社員本人の意向等を踏まえつつ決定していくと同時に、契約期間の変更⇒多様な正社員⇒正社員へ登用していく制度を設けるなど、中長期的な視点を持ち、その後の登用のあり方をあらかじめ想定していくことも大切です。

【STEP3】適用する労働条件を検討し、就業規則を作りましょう【STEP3】適用する労働条件を検討し、就業規則を作りましょう

中長期的視点に立つ場合、有期社員と労働条件が同一の無期契約労働者が増加する可能性があるため、雇用形態・労働条件を含めて、導入前に検討することが望ましいです。
また、すでに「多様な正社員」の仕組みがある場合は、既存の多様な正社員へ転換できるようにするのか、新たな雇用区分を作るのか等を含めて検討しましょう。どのような仕組みとするか検討した内容に基づき、就業規則を作成・改訂しましょう。無期転換者用の就業規則を作成した場合には、これらの規定の対象となる社員を、正社員の就業規則の対象から外しておく必要があるので、正社員の就業規則の見直しも検討しましょう。 なお、無期転換者と正社員の仕事内容や責任の範囲、労働条件などに差異がないにもかかわらず、処遇や評価に差異がある場合、妥当性や社員の納得性に留意した処遇や評価制度にすることが求められます

【STEP4】運用と改善を行いましょう【STEP4】運用と改善を行いましょう

無期転換制度の導入をスムーズに進める上で大切なのは、制度の設計段階から労使のコミュニケーションを密に行うことです。
労働組合(組合がない場合は労働者の過半数代表など)との協議を行うなど、社員と協議を行う場を持ち、労使双方にとって納得性のある制度を作っていくことが、導入・運用をスムーズに運ばせることに繋がります
また、無期転換申込権について、労働者に対して事前に説明することが望ましいです
なお、有期労働契約から無期労働契約への転換時には、勤務地の限定がなくなったり、時間外労働が発生するなど、働き方に変化が生じる場合があるため、無期転換後の労働条件については、改めて文書で通知する必要があります(様式:労働条件通知書(word)[37KB])。また、 このようなときに、社員側から不満や反発が出ないよう、丁寧な説明を心がけるとともに、円滑に転換が行われているかを把握し、必要に応じて改善を行う必要があります。

STEP1~3も含め、疑問点などがありましたら都道府県労働局雇用環境・均等部(室)へ
お気軽にお問い合わせください。

無期転換ルールの特例

「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法(有期雇用特別措置法)」によって、定年後引き続き雇用される有期雇用労働者等については、都道府県労働局長の認定を受けることで、無期転換申込権が発生しないとする特例が設けられています。